年金の脱退一時金の制度について
外国人技能実習生など日本国籍を有しない方が、厚生年金保険の被保険者資格を喪失して日本を出国した場合、日本に住所を有しなくなった日から2年以内であれば、脱退一時金を請求することができます。
外国人技能実習生であっても、社会保険の加入条件を満たすために年金は強制加入となります。永住資格を有することをしない・できない場合、通常、老齢年金を受給する前に母国に帰国することになりますので、それまでに納めた年金保険料は掛け捨てになる可能性があります。
脱退一時金の制度とは、納めた年金保険料が掛け捨てにならないよう、その一部を払い戻すものです。
ここでは、組合員である実習実施先にて、当組合監理のもと介護の実習を行う技能実習生を想定し、当該制度の概要と手続き等について説明いたします。
厚生年金保険の脱退一時金の支給要件と支給額について
1)脱退一時金の払い戻し手続きを行うことができる要件は、次のとおりです。
・日本国籍を有していない。
・公的年金制度(厚生年金保険または国民年金)の被保険者でない。
・厚生年金保険(共済組合等を含む)の加入期間の合計が6月以上ある。
・老齢年金の受給資格期間(10年間)を満たしていない。
・障害厚生年金(障害手当金を含む)などの年金を受ける権利を有したことがない。
・日本国内に住所を有していない。
・最後に公的年金制度の被保険者資格を喪失した日から2年以上経過していない。
※資格喪失日に日本国内に住所を有していた場合は、同日後に初めて、日本国内に住所を有しなくなった日から2年以上経過していない。
2)脱退一時金の支給額の計算式は、次の通りです。
被保険者であった期間の平均標準報酬額
×
支給率(保険料率×2分の1×支給率計算に用いる数)
被保険者期間であった期間の平均標準報酬額は、被保険者期間の標準報酬月額および標準賞与額を合算した額を、被保険者期間の月数で除して得た額になります。
支給率は、最終月(資格喪失した日の属する月の前月)の属する年の前年10月の保険料率(最終月が1月~8月であれば、前々年10月の保険料率)に2分の1を乗じた率に、被保険者期間の区分に応じた支給率計算に用いる数を乗じたものです。
被保険者であった期間 | 支給率計算に用いる数 | 支給率 |
---|---|---|
6月以上12月未満 | 6 | 0.5 |
12月以上18月未満 | 12 | 1.1 |
18月以上24月未満 | 18 | 1.6 |
24月以上30月未満 | 24 | 2.2 |
30月以上36月未満 | 30 | 2.7 |
36月以上42月未満 | 36 | 3.3 |
42月以上48月未満 | 42 | 3.8 |
48月以上54月未満 | 48 | 4.4 |
54月以上60月未満 | 54 | 4.9 |
60月以上 | 60 | 5.5 |
脱退一時金を請求する時に必要な書類について
脱退一時金の請求をするときに必要となる書類等については、次の表を参照ください。
書類名 | 確認事項 |
---|---|
脱退一時金請求書 | ー |
パスポート(旅券)の写し (氏名、生年月日、国籍、署名、在留資格の確認できるページ) | 本人からの請求であることの確認。 |
日本国内に住所を有しないことが確認できる書類 (住民票の除票の写しやパスポートの出国日が確認できるページの写し等) | 日本から出国していることの確認。※帰国前に市区町村に転出届を提出している場合は不要です。ただし、日本年金機構が外国人のアルファベット氏名の管理を開始した「平成24年7月」以前から被保険者である場合など、日本年金機構でアルファベット氏名を把握しておらず、住民票の消除情報を確認できない場合には、左記書類の提出が必要となります。 |
受取先金融機関名、支店名、支店の所在地、口座番号、請求者本人の口座名義であることを確認できる書類(金融機関が発行した証明書等。または請求書の「銀行の証明」欄に銀行の証明でも可) | 受取可能な金融機関であることおよび請求者本人名義の口座であることの確認。 ※日本国内の金融機関で受け取る場合は、口座名義がカタカナで登録されていることが必要です。 ※ゆうちょ銀行および一部インターネット専業銀行では脱退一時金を受け取ることができません。 |
基礎年金番号通知書または年金手帳等の基礎年金番号を明らかにすることができる書類 | 年金の加入期間の確認。 |
因みに、脱退一時金請求書は、手続書類は外国語と日本語が併記された様式となっており、以下の外国語に対応しています。
英語/中国語/韓国語/ポルトガル語/スペイン語/インドネシア語/フィリピノ(タガログ)語/タイ語/ベトナム語/ミャンマー語/カンボジア語/ロシア語/ネパール語/モンゴル語
日本年金機構「脱退一時金に関する手続きをおこなうとき」から引用。
提出先や提出方法、提出時期について
日本年金機構に対して、次の通り、脱退一時金請求書や添付書類を提出します。
提出先 | 日本年金機構本部または各共済組合等※加入していた制度およびその期間により提出先が異なります。 |
提出方法 | 郵送・電子申請※旅行など就労以外の目的で来日した場合には、年金事務所または街角の年金相談センターの窓口での提出が可能です。 |
提出時期 | 短期滞在の外国人が日本の住所をなくして出国後2年以内 |
脱退一時金の支給タイミングについて
提出書類に不備や確認事項等がなければ、
・請求書が受付けされてからおよそ4カ月後、
・日本円ではなく、支給対象となる国ごとにドル、ユーロなどの外国通貨を以て、
・支給決定された月の平均為替レートをもとに支給額を算定し、
・日本の銀行経由で振込み処理を以て、
支給されます。
また、脱退一時金の送金と同じタイミングで、「脱退一時金支給決定通知書」が送付されます。
日本年金機構「脱退一時金の請求書を提出したのですが、受取までにどれくらい時間がかかりますか。」参照。
留意事項について
■脱退一時金が支給されると、脱退一時金を請求する以前のすべての期間が年金加入期間ではなくなります。脱退一時金の請求手続きは、将来、日本の老齢年金を受け取ることになるのかどうか、技能実習生自身の将来を十分にイメージし、慎重に検討して行う必要があります。
■日本年金機構が請求書を受理した日に、住所がまだ日本にある場合には、脱退一時金は請求できません。住所登録をした市区町村に転出届を提出してから、脱退一時金を請求する必要があります。
■支給条件に「日本国内に住所を有しない」とありますので、日本年金機構へ請求書を提出タイミングには、十分に注意する必要があります。出国前に日本国内から郵送等で手続きをする場合、請求書が、住民票の転出(予定)日以降に日本年金機構等に到達するように送付する必要があります。